定期借家契約とは?そのメリットとデメリットは?

『借家にせず空き家のまま』という住宅の有効活用ができない実態を改善するために、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」の中で、一定の契約期間に達したら契約が終了する「定期建物賃貸借契約」の制度が2000年に導入されました。

これにより賃貸借契約の選択肢が増え、一定期間に限り賃貸に出すというニーズにこたえることができるようになりました。

住宅の有効活用のために誕生した「定期建物賃貸借契約」ですが、一定期間に限り賃貸に出すとはどういうことでしょうか。
「定期建物賃貸借契約」について具体的に、そして「普通賃貸借契約」との違いについてご説明致します。

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普通賃貸借契約は契約期間を更新できる

従来の契約を「普通賃貸借契約」または「一般賃貸借契約」と呼んでいます。
この普通賃貸借契約は、住宅や事務所なら2年、店舗なら3年などの一定期間の賃貸借期間を定めて、その期間が満了を迎える頃に契約期間を更新するための手続きを貸主と借主の間で行います。

例えば、「2020年12月1日~2022年11月30日までの2年間」の契約期間の期間満了が近づいたタイミングで、次は「2022年12月1日~2024年11月30日までの2年間」貸します・借りますと、貸主と借主の間で賃貸借契約期間を更新するという手続きをする(契約書を交わす)のです。

契約期間満了が近づいた際、貸主は『契約期間満了を迎えるから、契約をこれで終了しよう』ということはできません。
「契約期間を定めて、契約期間の更新を繰り返すことができる」これが普通賃貸借契約となります。

契約期間満了を理由に契約を終了することはできない

賃貸借契約の締結により、借主はそこを拠点として生活の基盤を作り、事業用であれば事務所や店舗として看板を掲げ事業を展開します。

賃貸借契約を締結するということは、借主が生活の基盤をその場所に作ることを、その場所の所有者(貸主)が認める事であり、貸主は受け取る賃料相当に見合う「生活の場」または「商売の場」を提供するという義務を負います。

そういう意味合いを含んでいる賃貸借契約を終了するとなると、借主の生活基盤をゆるがすほどに重大な理由が貸主には必要になります。
それを貸主の「正当事由」といい、正当事由がない限り毎月きちんと賃料を支払っている借主との賃貸借契約を「契約期間がちょうど満了になるから」と貸主側から一方的に終了することはできず、また契約の更新を拒むこともできません。

いざ裁判にまで至った場合、貸主借主それぞれの状況や事情をふまえて判断されるのですが、住宅においては特に、その貸室の必要性が高い方が有利となります。
そこを追い出されてしまうと生活が困難になり、路頭に迷う可能性が高いとみられる借主の方が基本的に有利であり、保護する立場にあると解釈されます。
貸室を他人に貸し、自身は別に自宅を持っている貸主は、生活する上で困難な状況とは考えにくく、財政的にも余裕があると受け取られます。
よって単に貸すのを終了したいという理由だけで、借主に対抗するのは難しいでしょう。

冒頭に述べたような『借家にせず空き家のまま』にしている住宅が存在している理由の一部は「一度貸したら容易に返してもらえないから」と考え、空き家のままとしている可能性があります。

定期建物賃貸借契約とは

そこで登場したのが「定期建物賃貸借契約」または「定期借家契約」です。

これは契約時に定めた契約期間が満了を迎えると、その期間をもって賃貸借が終了し、借主は貸室を明け渡すことを約束する契約です。
契約期間の満了にて契約は終了するので、契約期間を更新することはできません。

将来における建替えや、入居者がいてはできない大規模修繕、または自己使用を予定しているような場合に、この定期建物賃貸借契約の形態で契約を締結すれば、その期間をもって貸室は返却されます。

とはいえ、自動的に明け渡されることはありません。
一定の手続きを経る必要があります。

それは、契約期間が満了する日の半年から1年前までに、貸主から借主へ「契約が終了するので、貸室を明渡してほしい旨」を伝える書面を通知することです。
これは提示したことが公に認められる方法、例えば特定記録郵便などでの通知が良いでしょう。

郵便等を差し出した記録を残したい時におすすめの方法が「特定記録郵便」です。

特定記録郵便について
https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/tokutei_kiroku/index.html

別の方法でも構いません。
送ったこと、通知したことが記録として残る方法を選択してください。

ところで万が一、この通知が借主に提示されなかった場合どうなるのか。
通知がない場合、借主は契約期間の終了日が近づいても明け渡す義務はありません。
「貸主からの通知を受けてから、その期間が経過した後に明け渡す」という契約になっているからです。

ですので、貸主からの通知は非常に重要です。
契約期間が満了する日の半年から1年前までに、忘れずに借主へ通知することを覚えておいてください。

定期建物賃貸借契約の大きなデメリット

「なるほど、『契約が終了するから部屋を明け渡してください』という書面を通知すれば部屋の契約を終了できるのなら、今後の契約は全て定期建物賃貸借契約で契約すればいいね。」
と思われるかもしれません。

しかし定期建物賃貸借契約は、契約期間満了で貸室を明け渡してもらえるという約束ができるというメリットがありますが、大きなデメリットがあります。
それは短期間限定の住居や事務所・店舗を契約したいと望む人がほとんどいないということです。

住居も店舗の貸室も、月々の賃料は決して安いものではありません。
さらに敷金や礼金、仲介手数料や保険料など契約時に必要となる費用に、引っ越し代を含めると大きな負担となるので、気軽に引っ越しはできません。

そこへきて、借りようと思ったお部屋がたった2年で契約期間終了となるので出てってくださいという条件であると聞けば、避けようとするのは自然の意識です。
単身者向けの貸室なら、学生で卒業まででいいからとか、すぐに転勤すると思うから、と割り切れる人がいる可能性はあります。

しかし、ファミリー用の貸室は、お子さんの学校に通う期間は長く、小学校だけでも最低でも6年間はその場所に住みたいと考えるものです。

また事務所や店舗は長期的な経営を計画します。

飲食店などの店舗においては、お店の内装工事に何百万円以上の費用を投資します。
たった2年や3年での退去・明渡しを求められては、利益を生む以前に投資した分の回収ができないため、その場所での出店はあきらめるしかありません。

定期建物賃貸借契約は、借りる側にとってかなり厳しい条件となります。
気軽にこの契約を取り入れると、契約希望者が現れないまま空室状態が続く可能性が高くなります。
なんとなく契約を簡単に終了できるから、という理由でこの契約をしようと考えているのなら、普通賃貸借契約での契約をおすすめ致します。

それでも定期建物賃貸借契約で貸したい

とはいえ、将来における建替えや、入居者がいてはできない大規模修繕、または自己使用を予定しているような場合は、通常の契約である普通賃貸借契約を交わしてしまうと、いざ退去してほしい状況になっても容易に引っ越しを認めてもらえません。
そんな将来の計画が既に決まっている時こそ、定期建物賃貸借契約での契約の出番です。

ただし、デメリットを何かしらで相殺しなければ契約希望者が現れてくれません。
そこでデメリットを相殺するほどに効果が高い方法をご紹介します。

1 賃料を相場よりも安く設定する
2 初期費用の負担を軽くする

1 賃料を相場よりも安く設定する

単身者用であれば、お部屋の広さや家賃の額にもよりますが、数千円から1万~1万数千円の値下げが必要です。
ファミリー用は、単身者用に比べお部屋は広く家賃も高くなるので、通常10万台~20万円台くらいの家賃で貸せるお部屋であれば、数万円の値下げは必要だと思います。

2 初期費用の負担を軽くする

初期費用は、敷金や礼金、仲介手数料や保険料などです。
この中で貸主が受け取るものである、敷金や礼金などをできるだけゼロに近づけることができれば、引っ越しの総額が安く済むので、引っ越しへの抵抗感が和らぎ、通常よりも気軽に引っ越しを検討しやすくなります。
ただし、今は敷金も礼金もゼロゼロというお部屋が増えているので、効果が薄い可能性があります。
そういう場合、契約開始から1ヶ月目や2ヶ月目の家賃は免除しますという「フリーレント」期間を設けるという方法もあります。

家賃が通常よりも安く、初期費用の負担も軽い。
こういった条件での入居者募集は、「定期建物賃貸借契約のお部屋だから2年後に引っ越ししなければならないけど、それを考えてもこの部屋にこの安さで住めるならいいかも」と、そのお部屋を借りようとしている人が前向きに検討できる材料となります。

住宅の有効活用のために誕生した「定期建物賃貸借契約」です。
定期建物賃貸借契約で契約するのは、何かしらの事情があるためにその手段を利用するのが一般的です。

空室にせず、家賃収入を得るためにそのお部屋を短期間限定で貸すことになるため、通常の貸し方ができない分、相場と同じような利益を見込むことは難しいと考えて頂いた方がいいでしょう。

以上が、定期建物賃貸借契約について、そして普通賃貸借契約の違いでした。
短期間で貸し出すかどうか迷われている方がいらっしゃいましたら、この記事が参考になりますと幸いです。
また、疑問や質問などありましたら、こんな記事を読んだと不動産会社の人に相談してみるのも一つです。
もちろん当社へもお気軽にご相談ください。

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